第22回日本運動器看護学会学術集会

大会長挨拶

 新型コロナウイルス感染症への対応に日々ご尽力されております医療現場の皆さま、また教育・研究の場や地域の中でご尽力されております皆様に、心からの敬意と感謝の意を表します。

 医療現場も個々の生活の中にも様々な変化を強いられたこの一年、誰もが今までの“当たり前”を壊し、新たな枠組みを作りあげながら乗り切ってきました。同時に、環境や政策の効果・浸透に頼るだけでなく、新しい枠組みの中で求められる看護・提供できる看護を考え実践しなければならず、行き詰まったり思い悩んだりしたことも数多あったのではないでしょうか。

 そのような状況を見聞きしながら、第22回のテーマを「未来をみすえて持ち場で動こう!~運動器看護の醸成~」といたしました。今の状況が“永遠”ではないと学んだのであれば、少し先の未来を予測しながら、自分の居る場所(持ち場)で何ができるか、を共に考える機会としたいという想いからです。

 この学会は、常に整形外科という領域にこだわらず、運動器という幅広い視野で人間の“動くこと”に焦点をあててきました。運動器は人間のあらゆる部分に存在する機能です。小児のよちよち歩きから、成人としての骨形成の時期、妊娠期の姿勢やバランスの変化、壮年期の五十肩など、高齢者のみならず発達段階のどの段階においても運動器の視点で提供できる看護があります。また、その提供の場は、入院生活だけでなく、退院後の生活の中に、企業の中に、教育・学校の場に、存在しています。知識としては理解していても、どこかで「運動器看護は整形外科でなければ実践できない」と思っていないでしょうか。第22回の学術集会では、今一度、色々な視点から運動器という機能を眺めてみたいと考えております。

 そして自分の持ち場をあらためて意識したとき、次に考えるのは、そこに存在する自分には「何ができるか」です。自分はどのような知識・技術・知恵を持った看護師であるのかを認識し、自己の強みをどう活かしていくか・・・この学術集会の場で、皆で一緒に考えてみませんか。オンラインではありますが、ライブで話し合える「しゃべり場」を設けようと鋭意検討中です!

 このように、今回の学術集会は、今まで培ってきた運動器看護の知識・技術・知恵を再認識し、“当たり前”と思っていたことを今一度振り返り、今、これから、私たちにできることを一緒に考える・・・参加型の学術集会として企画しております。サブテーマに掲げた「醸成」とは、食に関して言えば、発酵させ旨みを深めた味を引き出すことを指しますが、社会的には機運や雰囲気などを作りだすという意味もあります。この学術集会で新たな知見を得るだけでなく、明日から自分の持ち場で「自分にできる」実践を1つでも見いだせていれば幸いです。

 皆さまの参加をお待ちしております。

第22回日本運動器看護学会学術集会 大会長
田渕 かおり(聖隷横浜病院 看護部 課長)